私が歌川です

@utgwkk が書いている

いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学

この本は id:Pasta-K さんに誕生日プレゼントとしていただきました。


お金や時間が足りない、ダイエットのようにやりたいことを我慢していてできない状態、をリソースが足りない状態、欠乏であるとしている。欠乏状態では、喫緊の課題を解決するための集中力は上がる(集中ボーナスと呼ぶ)が、少し先の重要だが緊急でない課題は後回しにされる(トンネリングと呼ぶ)。借金の返済が終わらない、給付金の申し込みができない、常に予定が埋まっている、というのをこの本では欠乏の罠と呼んでいる。

荷造りをしているときに、余裕のあるかばんに対して何を入れて何を後回しにするか考えることはない。欠乏の罠に陥らないためには、このような余裕(スラックと呼ぶ)が常にあることが重要であるとしている。突然の出費に対して貯金が足りないと借金をするしかなくなり、借金返済のことしか考えられなくなってしまう。常に欠乏状態にあるわけでもない人が欠乏状態に陥ってしまうのは、豊かな時期にスラックを作らないためである、というのも印象的だった。

欠乏状態にあるとき、目先の課題を解決するための集中力はすさまじいが、将来のことはまったく考えられなくなる、というのは身に覚えがあって、さまざまな実験や事例によってこれが普遍的な現象であることが示されていた。怠慢のためにやらないとか、方法を知らないとかではなく、処理能力に多大な負荷がかかっているので考えが及ばない、といったほうが近い。スケジュールでジェンガをやるようになったらもう追い込まれている、ということ。

この本のあとがきや解説のセクションも集中ボーナスによって書かれている、というのが伏線回収しててよかった。学部時代はよく生きていたなと思うけど、いま考えるとだいぶトンネルの中にいたと思う。

scrapbox.io